相続した不動産に抵当権(仮登記)がついていた!
先日、知人のご相続のお手続きを担当した際のこと、土地と建物に抵当権仮登記がついておりました。
今後、もしこの不動産を売買する場合には、
以下の理由から(完済済みの)抵当権は早めに消した方が良いと、お伝えしました。
理由①
買主が金融機関から融資を受けて購入するには、金融機関の担保権をつけることが一般的で、
この抵当権がついたままだと、金融機関の与信等の都合上、買主が融資を受けることができない為。
(既に抵当権の登記がされている不動産を担保に融資を受けることは考えにくいです。)
理由②
不動産売買契約書には、登記簿上に存在する担保権は売主が責任を持って消すことという条項があることが一般的で、
いざ消そうとなった場合に、抵当権者が完済時に発行してくれた、登記に必要な書類を紛失していたら、
抵当権者が完済時に発行してくれた書類を改めて作成するための費用として、
売主が、10万円近くお支払いしなくてはならない為。
(完済のタイミングで消していない場合、この書類を紛失していることが多いです。)
話を知人との会話に戻し…
よくよく聞いてみると、知人のお父様は、生前、事業をされていたとのことで、
抵当権者(債権者)として登記されている方は、取引先の方で、この方もお亡くなりになっているとのことでした。
その方のご子息とはご連絡がとれるそうなので、お話を伺ってみることに…
後日、抵当権者のご子息にお会いし、借金はもう完済されているようですが、
実際にいつ頃までに完済されたのか等がわかるような資料は、すべて捨ててしまっているとのことでした。
また、もう一人の相続人である妹様とは、連絡がとれないとのことでした。
以下、私の頭の中で考えたこと。
ということは、抵当権の権利証もないということか…
(抵当権を消す場合には、抵当権の登記がされた際に、抵当権者に発行される権利証が必要です。)
でも、今回は仮登記だから、抵当権者の承諾書があれば、権利証がなくても消せるか…
(仮登記は通常の登記とは違い、抵当権者の承諾書があれば、不動産の所有者から抵当権を消すことができます。)
抵当権者の承諾書=抵当権者の相続人全員の承諾書が必要ということは、妹様からもらえないから承諾書はなしだな…
ひとまず、ご子息にお父様の相続手続きの際に調印された遺産分割協議書を見せてもらいました。
遺産分割協議書を読み進めていったところ、最後の方に、
妹様が取得する財産以外のすべての財産は、ご子息が取得するとの一文がありました。
この一文から、抵当権という権利もご子息が取得することができますので、
仮登記された抵当権を相続により、ご子息が引き継ぎ、
そして、ご子息の判断により、抵当権仮登記を消すという方法が、
時間も費用もあまりかけることなく、消せる最善の方法だという判断に至りました。
明治、大正、昭和に登記された担保権が消したいのに消せないという場面に
これまで、何度か出くわしました。
皆様におかれましても、ご完済された担保権は、ご完済された際に消されますよう、お願い申し上げます。

木村成愛 代表司法書士
Narie Kimura
2018年、司法書士試験合格。
大手司法書士法人に6年程務めた後、独立。
お客様に寄り添って、難しい問題の解決策を見つけることを得意とする。
[ 保有資格 ]
・司法書士
・宅建士(未登録)